2009年4月22日水曜日

何をするべきか

今、企業をどのような形態にするべきなのか本気で考えなければならないときがきた。マスコミも政治家も短期的な視点で、景気さえ良くなればそれでよいと考えているようだ。しかし、私たちはそれでは満足することは出来ない。企業が引き起こした一連の不祥事が今回の金融危機をもたらしたことを忘れてはいけない。景気が回復して以前のようなマネーゲームが再開されたら何の問題も解決しないまま、同じ経済危機を招いてしまう。私たちがやらなければならない問題はどのような社会を構築するのか、産業構造をどのように改めるのか、企業のあり方はどうあるべきか、その他経済に関する諸問題についてどうするのか考えなければならない。派遣社員制度は働く若者たちを犠牲にして企業が利益を極大化しようと考えられたものである。企業が生き延びるためには何をやっても良いと考えているのだろか。企業のために人がいるのではなく、人間のために企業が必要なのだ。

自由で民主的な企業活動は、自由で民主的な社会でなければ実現することは出来ない。私たちは経済さえ発展すれば全て良いなどと思っていない。企業のあり方は社会を反映するもので、社会の変化は企業の変化をもたらす。アメリカの企業が政府から金融支援を受けたことは、それまでのアメリカ企業の象徴であった自由を束縛されることになった。すでにAIG社やGMの役員賞与についてクレームがつき、経営者の意思決定も批判され、アメリカ企業の経営者の権力は確実に小さくなってしまった。アメリカ社会が変わっていくことを示唆している。
日本の社会は昭和20年以降、先人の努力と犠牲の上に平和で自由で民主的な社会をつくり上げることが出来た。自由を束縛された長い時間を経て自由のありがたさを知った。戦争ばかりの時代を経験して平和のありがたさを知った。だからといってアメリカのように自由や民主主義を他国に押し付けてはいけない。それぞれの国にはそれぞれの歴史的発展段階があるからだ。他国が求めたとき日本は惜しみなく手を貸せばよい。いま、日本は社会を変えなければならないときが来ている。

2009年4月21日火曜日

何を間違えたのか

資本主義の変節

 ベルリンの壁が壊され、ソビエトが崩壊し東ヨーロッパも資本主義社会の側に引き寄せられ、中国も私有財産を許し資本主義的な企業が設立されるようになると世界は資本主義の自由経済こそ絶対的なものだと思い込むようになった。そもそもこうした資本主義システムの欠陥は以前から知られていたことで、経済恐慌についても周知のことで何度も経験してきたことである。それにもかかわらず多くの国や投資家たちは、集めた資金をアメリカに投資し、実態のない経済活動で利益を得てきたのである。このような経済活動による金儲けは詐欺と変わらない。彼らは今回の経済不況が始まると同時に、自分の金を持って逃げ出してしまった。ドバイでは、石油で儲けた豊富な資金の投資先として巨大なヨットハーバーや1000mの高層ビルを計画し、さらに世界でもっとも高級ホテルを用意して金持ちの楽園を造ろうとした。しかしこれらは現在のところ、資金不足で建設はストップしている。

資本主義体制が完全なものでないことは、拡がる一方の貧富の差、環境の悪化、社会の不安を見れば十分に理解できることである。人類の歴史でこれほど大規模に爛熟してしまった社会はない。ローマ帝国も繁栄の後に訪れたのは滅亡だった。私たちは私たちが今おかれている社会をしっかり見て、何をしなければならないか、何が問題なのかしっかりと考えるときである。一部の国、一部の地域、一部の人だけが豊かになり、多くの人たちが飢餓に苦しむような社会は良いはずがない。先進国は豊かさの代償に大切な多くのものを失ってしまったことを考えなければいけない。
封建社会が崩壊したように、資本主義社会も滅びないとは限らない。現在地球上の人間で近代文明の恩恵を受けている人々は、全体の2割程度で、8割もの人々が貧しい生活をしている。資本主義はこうしたことも解決できていないのだ。

2009年4月20日月曜日

マネーゲームを始めた人たち

マネービバレッジ

 サブプライムローンの破綻に関しては金融工学の発展によるマネーゲームのような経済理論も無視できない。以前から不良債権を優良債権の中に混ぜて、ひとつの金融商品として販売することは行われていた。不良債権を全体の中で処理していくことで金融会社の負担を減らし、みんなでこれを負担する方法は悪いことではない。
かつて、ジャンク債と呼ばれる債権を使って企業を買収する手法が行われていた。ジャンクポンドとはクズの株券を集め、これを担保に大量の資金を引き出し、その資金で企業を買収し、買収によって株価の引き上げを狙ったり、あるいはこの買収した企業を解体整理して売却することで利益をあげたりした。

近年、わずかな資金を元手に大きな資金を引き出す方法が開発され、その引き出した資金を担保にさらに大きな資金を集めるための方法も考え出された。もともとサブプライムローンも本来住宅をもてない低所得者に資金を貸し付け、住宅を持たせるものである。景気がよく、土地や住宅価格が上昇している間は返済可能だが、一度不況で土地や住宅の価格の下落が始まるとたちまち不良債権になる

多くの日本人は、ものを買うときにお金を貯めてから買うか、あるいは高価なものの場合ローンを組んで物を買う。ところがこうした当たり前と思われていたことが今の世界では当たり前ではなくなってしまった。実態のないものに付加価値を付けて将来の利益を見込んで投資が行われている。バブル経済のときにライブドアをはじめ多くの新経済人たちが少ない資金を数倍に増やす方法を見つけ実行した。堀江氏は自分の会社の株を分割して売却することで株価が上昇することを発見し、自社株を小さく分割した。そうすると今までライブドアの株は株数が増え、購入層が広がり株価を引き上げた。ライブドアのように実態以上に株価を吊り上げて多額の資金を手にした企業は、次々と企業買収を始めた。こうしてこの会社はさらに株価が上昇するようになった。

村上ファンドの村上氏は記者会見で「金をもうけることは悪いことですか」と居直った。こうしたことが国際的な規模で日本マネー、中国マネー、中東マネーを利用して行われていたのである。そしてこのゲームが行き着くところまで行って破綻した。これから今までのバブルを全て消して借金を返済して再スタートしなければならない。

2009年4月18日土曜日

何が起こったのか

アメリカ経済発展のカラクリ

2008年夏にアメリカで起こったサブプライムローンの破綻は瞬く間に世界中に大きな波紋を投げかけ半年後の現在でも企業の経営に大きな負担を与え、収束する気配は見えない。サブプライムローンはアメリカにおける中下層の人たちに住宅を提供しようとするもので、アメリカにおける社会政策の一環である。アメリカにおいて彼らが住宅を取得することは並大抵なことではない。いったん景気が低迷して失業したらローンの返済は滞り、せっかく手に入れた住宅は手放さなければならなくなる。日本と違って、品物の購入について、お金を貯めてから買うという習慣はなく、欲しいものはローンで購入し、後で支払えばよいと考えている。

貯蓄を持たないアメリカ人にとって物品をローンで購入することはごく自然なことで、サブプライムローンの破綻は日本人が考える以上に企業に対する影響は大きい。アメリカの金融機関は不良債権も多く、その対策として優良債権の中に不良債権を潜り込ませ一緒にしたものを金融商品として分割して売却している。アメリカの通貨はアメリカの通貨であると同時に世界通貨でもあり、世界中からの需要も多くアメリカに投資する国は多い。アメリカ政府はドルをいくらでも印刷することが出来るし、それによってインフレを心配することなくドルを発行しながら、海外からの資金を集めることが出来る。



  双子の赤字と呼ばれる財政赤字・貿易赤字でもアメリカは20年以上経済発展を続けられることが可能だったのはアメリカ以外でドルの需要があるからで、アメリカ国内で使われる以外、海外何処でもアメリカのドルは必要だからである。近年のアメリカ経済の繁栄は、海外から集められた投資資金を使って、この金をローンという形でアメリカ国民に使わせている。日本や中国のように輸出によって経済発展に成功した国では、大量にドル資金が流入する。ところがこのドルの投資先はそれほどたくさんあるわけでなく結局、金利の高いアメリカに向けて資金を投資することになる。こうしてアメリカ政府はアメリカ国債を日本、中国、中東諸国に売りつけてきた。つまり海外の資金をアメリカに集め、その金をアメリカ国民に使わせ、消費を煽る。購買意欲旺盛なアメリカの消費者は、ローンを使って商品を購入し大量に消費する。そこでアメリカは日本、中国などから消費財を購入し貿易収支は赤字となるが資金と商品が日本、中国アメリカの間をぐるぐる回転するようになっている。

  ところがこのサブプライムローンの破綻は、日本、中国、アメリカの経済循環の回転を分断することになってしまった。株価は暴落し、資金不足に陥ったアメリカ金融機関は、その存続さえも危ぶまれ、多額の政府資金の投入を必要とした。企業も資金不足になり経営の縮小と従業員の解雇を行わざるを得ない状況になった。消費者は購買意欲を失い、日本中国からの購入を減らした。そのため日本、中国は商品の売却先を失い経済縮小を余儀なくされ世界同時不況の波に飲み込まれてしまった。

  さらに世界経済の状況はさらに深刻である。多くの国では、アメリカを胴元としてマネーゲームが行われていた。少しでも金利が高く条件の良いところに多額の資金が投入され利ざやを稼いでいた。当然、より多くの投資資金があれば儲けも大きくなるので多くの資金が導入されることになる。そこで自分たちの持っている資金を担保にさらに多くの資金を借りて投資を行うようになった。これらの国では株価の下落や借入金の返済で大損をしてしまった。



  これが現在までに起こった世界経済の状況であり、不況は長引き簡単に回復できないのではないかと思われる。今、必要なことは経済を元も状態に戻すことではなく、行き過ぎたマネーゲームをやめ、過剰消費を抑えながらも新しいシステムで発展していくシステムを構築することである。経済を元に戻したら、またあのマネーゲームが始まるだけで状況はより深刻になってしまう。だから時間がかかり政府の役割も重要である。政府は国民に短期的ビジョンと長期的ビジョンを示す必要があり、政治がしっかりしなければ困るのは国民である。