2019年12月24日火曜日

管理組織の形態とNPO

かんぽ生命と日本郵便の不正保険販売について、問題点が明らかになった。つまり高齢者をだまして生命保険に加入させたということである。しかも、このような不正な手段で加入させた社員には高額な手当てを出して、儲かればよいという経営を行ってきたということである。
 郵便局ともあろうものが、このような不正な行為を行ってきたということは、郵政民営化の弊害によるものと断定せざるを得ない。そして、この会社の価値観やコンプライアンスと管理の在り方に大きな問題があるということである。

私は企業の目的について何度も話をしてきた。企業の目的は利益を出すことではなく、社会に貢献することである。そして、社会貢献するために利益を出さなくては何もできない。だから企業が利益を出すのは目的ではなく、必要要件なのである。かんぽと日本郵便は利益を出すことを目的にしてしまった結果、このような不正を不正と感じなくなってしまったのだろう。

企業組織には国営、民営、第三セクターという分類があり、民営企業には株式会社、有限会社、個人会社などがある。これらの会社は利益を出さなければ最悪の場合、倒産してしまうことがあるので営利企業という。これとは別に利益を出さなくても良い組織もあり、それはNPOやNGOという非営利組織である。株式会社の悪い点は利益が出ないことには手をだせないということである。そこで、利益を出さなくてもよいNPOやNGOについて注目が集まっている。

特定非営利活動法人(NPO法人)制度とは

特定非営利活動促進法は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、 ボランティア活動をはじめとする市民の自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進することを目的として、平成10年12月に施行された。
 
特定非営利活動は、以下の20種類の分野に該当する活動であり、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とする。つまりNPOは広範な、と言うよりほとんどすべての分野へ進出することができる。



1 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづくりの推進を図る活動
4 観光の振興を図る活動
5 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7 環境の保全を図る活動
8 災害救援活動
9 地域安全活動
10 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11 国際協力の活動
12 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13 子どもの健全育成を図る活動
14 情報化社会の発展を図る活動
15 科学技術の振興を図る活動
16 経済活動の活性化を図る活動
17 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18 消費者の保護を図る活動
19 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

NPO法人は、特定非営利活動に必要な資金や運営費に充てるために、特定非営利活動に支障がない限り、 特定非営利活動に係る事業以外の事業(その他の事業)を行うことができる。 この場合、「その他の事業」に関する会計を特定非営利活動に係る会計から区分しなければならない。

▼NPO法人の場合
メリット
設立に費用がかからない
補助金や支援プログラムの種類が多い
税法上の優遇がある


デメリット
設立に時間、人が多く必要になる
役員の親族規定がある
活動内容に制限がある
所轄庁への事業報告や情報公開等の義務があり、活動内容をオープンにしなければならない


▼一般社団法人の場合
メリット
設立にかかる時間、人が少ない
役員の親族規定がない
活動内容の制限がない
活動内容を外部に開示する必要がない

デメリット
設立に費用がかかる
補助金や支援プログラムの種類が少ない
非営利型でなければ税法上の優遇が受けられない

2019年12月16日月曜日

エネルギー・環境と企業の社会的責任

 1エネルギーと環境問題
① エネルギー産業は利権の塊
3月11日の震災直後に起こった東京電力の福島第一原子力発電所の事故直後、多くの日
本人は原子力発電所はいらないと判断し、現在でも国民の半数以上の人々は原発再稼働に
反対している。ところが原子力関連企業は、あらゆる手を使って、原子力産業が日本にと
って必要であると明言し、マスコミ、出版、研究者、広告、政治家を総動員して、あれほ
どの事故でも安全であり日本に原発は必要だと言い続けている。資源エネルギー庁は平成
30年「原子力に関する国民理解のための広聴・広報事業」に4.3億円「広報・調査等交付
金」は8.3億円を使って原子力発電の必要性を訴えている。 1  関西電力の経営者による7
年間で3億2千万円にもなる金品の受領問題は、原子力発電に関わる年間数兆円ともいわ
れる利権全体のごく一部が発覚したに過ぎない。
なぜこれほどまでに原子力産業に固執するのかといえば、国策であり、やはりエネルギ
ー産業は利権の塊で、エネルギーは儲かる、特に原子力発電は日米産軍複合体(東芝WH,
日立GEなど)による強固な世界戦略の一端を担う、儲かる産業なのである。石油利権が欧
米の手から産油国側に渡った現在、アメリカにとって原子力利権は手放すことができない
重要なものである。原子力発電の原子炉技術は、日米が最高峰の位置にあり、これから開
発途上国に売り込むためにも、国防上の理由からも原子力が安全であると訴え続けなけれ
ばならない。資本にとって脱原発などの選択は容易ではなく、一方の儲からないエネルギ
ーとしての再生可能エネルギーは、資本から疎んじられ、世界の潮流は再生可能エネルギ
ーの利用であるのに、たいへん皮肉なことに原子力による大きな被害を経験し、国民が拒
絶している原子力産業からの脱却が最も困難なのが日本なのである。原発事故の責任の所
在について議論はしても結局だれも責任を取らず、不可抗力の天災ということでかたづけ
てしまおうとするやり方は、日本の社会システムが過去から何も学ばず、何も変わってい
ないことを示している。 2

 株式会社制度下での環境問題
株式会社制度の最大の欠陥が、儲からない仕事はできないことである。それが分かって
いるから、一生懸命に社会貢献をPRし、多くの企業のwebサイトには必ずといってよいほ
ど社会貢献欄があって、いかにも社会の役に立っているように見せているが、企業による
環境問題の取り組みは不十分で、温暖化防止対策に対する意識も高まりを見せていない
。 3  それでも中には環境NPO組織と協働することで、社会貢献に取り組む企業がある。社
会貢献上手だが金集めが下手なNPOと、社会貢献下手だが金儲け上手な組織が手を組むこ
とで成果を上げ高い評価を上げている組織の取り組みは期待したい。出来ることならば環
境問題は制度化して、企業の義務として行わなければならない事案で、いずれにせよ企業
の善意に頼る環境問題の解決を待っている時間はない。
1 平成30年3月20日経済産業省、資源エネルギー庁 対話後方の取り組み。
2 福島第一原子力発電所事故で、業務上過失致死傷罪により起訴された東京電力の旧経営陣3人は東京地方裁判所から無罪判決を言い渡された。
3 環境省「環境にやさしい企業調査」平成29年度。
                                      

 株主資本主義の誤り
 「企業はだれのものか」という議論では、株主優先で結論が出た、というより押し切ら
れてしまった。従業員優先の日本的経営は時代遅れのローカルな考え方、として片づけら
れ、その結果、終身雇用は崩壊し、非正規雇用が増え、会社の利益を労働者には分配せず
、それより株価を上げるため、株主への配当金を多くすることで、世界の投資家を呼び込
み、無節操な経済活動を仕掛け、日本においても格差社会が誕生していった。
 ヘンリー・フォードが自動車会社を創業した時、多くのスポンサーが資金を提供して会
社が設立された。確かに、この時この会社は株主のものと言ってよいだろう。明治初期、
三菱における株式会社設立は、岩崎弥太郎個人による出資で、いわば株式会社制度を組織
支配の目的に利用した、どちらかというと日本の場合、株式会社制度がゆがめられた形で
スタートした。圧倒的多数を占める日本の中小零細企業は、大企業と異なり経営者自身に
よる出資で会社が設立される場合が多く、資本と経営は分離されていない。長期雇用で会
社と信頼関係を維持し、会社を守ってきたのは株主ではなく従業員だった。
株主資本主義的な考え方は、実は株主を盾にした経営者支配の一つの側面で、経営の責
任を実態のはっきりしない株主に押しつけているのではないだろうか。海外の投資家を呼
び込むため、グローバル化政策で株主資本主義をとり、企業が投機の対象とされる不健全
な株式会社制度が一般化することは、従来の日本的な経営の考え方の対極に位置するもの
で、非正規雇用の低賃金では生計も立てられず、忠誠心も仲間意識も消え、働く意欲さえ
も失われていく結果となった。問題は従来の日本的経営では世界の潮流から取り残され、
いままでのような経済や国民生活を維持することは困難であるから、新しい日本企業の経
営理念が必要になったということである。

 近未来への危惧
 2017年にS・ホーキング氏はAIを導入することで、人類に残された時間は100年と述べた
ことはよく知られている。西澤潤一氏も「人類は80年で滅亡する」と環境問題の現状分析
の結果から予知している。 10  多くの分野の研究者がそれぞれの立場で、人類の近未来に
危機感を表明している。 11  原発についても同様で、どこの国でも原発ごみの処理に困窮
しており、廃炉は当然でも廃棄する場所などどこにもない。
アメリカ型グローバル企業は株主の要求を盾に、自社の利益と結びついた事業には、ど
ん欲に投資を行う一方、石炭・石油をはじめとする化石燃料は未来の人類の財産として残
しておこうとはせず、未来の利益も先取りし環境やエネルギー問題、温暖化による地球環
境の変化にも気を留めず、右上がりの発展を信じ、開発一辺倒の経済活動を進めている。
さらに近年、地球の資源だけではなく宇宙の資源開発に着目し、地球資源が枯渇するとき
に備える開発が行われている。 12  
巨大なグローバル企業は、国家組織と並ぶほどの資産を有し、社会に対する影響力も大
きく、これを「株主のもの」というには、あまりにも狭視野的すぎる。環境問題を解決す
るためにはグローバル企業の協力が必要であり、現代の巨大株式会社組織には、そのコー
ポレートガバナンスに新しい視点が求められなければならない。社会に必要でやらなけれ
ばならないことは、企業の利益に結び付かなくても、成し遂げられる社会にしなければな
らない。エネルギー、環境や生態系について、そして人類が平等に幸福になるための方策
を実行することが必要である。
9 厚生労働省「労働経済の推移と特徴」2018年、26ページ。
10 西澤・上野『人類は80年で滅亡する』東洋経済2000年2月。
11 シーア・コルボーン他、長尾力訳、『奪われし未来』翔泳社、1997年。
12 日本の宇宙開発利用体制は内閣、文部、経産、国土、環境省と広域に跨り検討され、2016年11月宇宙活動法が成立、世界的な開発競争が行われている。

 環境問題対策の新潮流
 さらに民間企業においても大きな変化の時代を迎えている。仮想通貨やキャッシュレス
社会の出現で、今までよりも銀行の存在感が薄くなるとの認識が、銀行経営に大きなイン
パクトを与え、大手都市銀行で数万人単位の解雇が始まった。追い込まれた銀行は、API
(Application Programming Interface)戦略を採用し、異業種連携によるビジネスアイ
デア共創の場を提供し始めている。銀行のソフトウェアを一部公開して、他企業のソフト
ウェアと機能を共有できるようにして、異業種・他企業と新しいビジネスを創造していく
契機にしている。ここに環境保護を目指す組織が参入することで、今までになかった新し
いビジネスや、環境に関するイノベーションを生み出すことが期待される。
グローバル資本が私欲ではなく、本当の意味で地球の環境を復活と人々の幸せのために
機能させることが大切である。当然、問題課題は山ほどある。どのように現在のグローバ
ル資本を環境重視型の企業に代えていくのか、新たなイノベーションを必要としている。

結論
 日本において株式会社制度は人間主体の制度であったのに対し、アメリカ型のグローバ
ル会社制度は、他国に対して大きな犠牲を払わせるものだった。それは資本や労働だけで
なく、自然環境に対しても同じである。長い停滞とアメリカからの圧力で日本の株式会社
制度は大きく傷ついてしまった。
時代は大きく変わろうとしている。このチャンスに日本は現在の会社制度をアメリカ型
グローバル経営から、多くの人々が共感できる新しい制度に改革するべきである。必要な
のは破壊した日本的経営を再生するのではなく、新たな視点で創造するという壮大な目標
を掲げることである。エネルギー資源の少ない日本にとって、安全で環境破壊の少ない新
たなシステム造りは、絶対必要な要件である。そのためのイノベーションやスタートアッ
プ企業には集中的に支援し、日本発の新たなビジネスモデルを構築することが望まれる。
現代社会をすでに資本主義の末期あるいは、今までとは異なる資本主義体制への転換点
なのではないかと考える。資本主義が生き残れるか否か、環境問題の解決にかかっている
。それはグローバル化のもとに破壊された日本的経営の再構築ではなく、全く新しくこれ
からの時代に対応し、企業が指標としてめざすべき日本の経営理念を求めることである。
その概念は、エネルギー、環境そして社会貢献であり、利益の追求ではない。新たな社会
制度の中に環境問題を組み込み、現代企業が税金を払うのと同じように、エネルギーや環
境の問題について、果たすべき役割を義務化することである。日本が手本を示して、格差
をなくすことで貧困問題を克服し、日本の強みである技術力や豊かな文化をエネルギー、
環境そして社会貢献に向ける理念を構築すること。孤立を避けてだれもが共感できる理念
を打ち立てることで、同じ思いで後に続いてくる仲間を増やすことも必要である。現在の
新自由主義的な方向が行き詰まっていることから考えて、必ず新しい道を開かなければな
らないと願うばかりである。

2019年12月9日月曜日

メンタルヘルスマネジメント

 1998年バブルの崩壊後、不況が本格化すると日本人の自殺者は急速に増加し、年間3万人にも達し社会問題になった。それ以後2014年まで年間3万人以上の自殺者数は減少することはなかった。しかし、2015年以降、景気が回復してくると自殺者数は減少しはじめた。経済の停滞が、働く労働者に直接大きな負担となっている日本の現状については、見過ごすことができない大きな問題である。日本の自殺率が、労働者の責任とは無関係な、景気の動向に関わっているという事実は問題にしなければならない。さらに問題なのは日本の場合、若年層の自殺が世界で最も高いという事実である。
  ブラック企業といわれる労働者に過剰な責任を押し付ける企業についても同様である。企業で働く労働者がストレスを抱えているにも関わらず、彼らの精神的な負担は理解されにくく、こうした問題も自殺者数の増加と無縁ではない。ブラック企業の存在は、働く労働者だけではなく、学生のアルバイトにおいても深刻な問題を投げかけており、日本では労働者のストレスによる精神障害は労災として認定されにくく、ストレスによる休職者の半数が職場復帰できないほど深刻な状況で、職場においてストレスによる精神障害はいまだにしっかりと理解されていない。OECDは、日本はうつ病関連自殺により25.4億ドルの経済的損失をまねいていると推定している。


ストレスマネジメントとは
ストレスによって心身に悪影響を及ぼさないよう、対策を行うこと.ストレス状態が続くと、心身に何らかの症状が生じたり、生活に支障をきた
す。そのため、一定度合いを超えないよう適切な対処法を取ることでストレスを軽減し、上手に付き合っていくために行う対策のこと。


 ストレスチェック制度は、201512月から導入され、50人以上の従業員がいる職場で実施が義務化されている。その結果、321の企業・団体、合計72,311人分の集団分析データをもとに[ストレス要因]業種別ランキングが発表された。その結果、「建設」「卸売・小売」「金融」で仕事の負担感が高く、「郵便等」「公務」で低いことが判明し、職種によってストレスの多少があることが明らかになった。

 結果をチェックして終わりではなく、結果を活かせる環境づくりが必用で、毎年その人の状態を継続的にフォローしていくことが大切。


ストレスチェックの結果、だれがストレスを与えているのかという、犯人探しが行われる場合がある。このような職場ではストレスチェックが機能しない。すく場の人間関係は重要で、優秀な社員の健全な育成は企業の業績に大きな影響を及ぼす。



 やりがい搾取という用語が話題になったのは10年ほど前のことで、大志を抱く若者に、夢の実現を叶えるような仕事を与え、過剰に働かせるというものである。若くして思いもかけず店長やリーダーに抜擢され、あるいは自分が最もやりたかった仕事を与えることで、彼らは喜んで一生懸命に仕事に励むことになる。彼らはやがて、低賃金で長時間労働させられていたことに気が付くが、激しい体力の消耗で罹患してしまう者も多い。



 従業員に自社製品を売りつけたり、ノルマと称して過剰に物品を販売させ、売れ残ったら自分で買い取らせるなどの行為を行っている企業も多く、以前大手コンビニエンスストアやファミリーレストランでアルバイトをしていた学生が、仕方なしに大学内でクリスマスケーキを売り歩いていたことがあった。呉服チェーンに就職した卒業生が、先輩社員から高価な和服を売りつけられ、ローンの支払いに苦しんでいた者もいた。「会社が夢の実現をお手伝いする」などの言葉には要注意である。


 厚生労働省は平成12年8月に労働安全衛生法の中に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定している。学校や職場で心の病に陥った時、だれもが不当な扱いを受けないように法律で守られている。決して泣き寝入りしないように。


仕事でストレスを感じたら、うつ症状に注意し、自分で簡単なストレスチェックをしよう。

・朝起きられない

・仕事や学校に行きたくない

・笑顔がなくなった

・独り言を言うようになった

このような症状が出たら、軽いうつ状態である。職場を変えるか、病院に行くべきである。



うつにならないように気を付けよう

・朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる

・鏡で表情チェック ・ネガティブな言動は慎む

・自分に良い環境をつくる ・自分がいやなことをやらない

・がまんしないで言いたいことは言う

・瞑想などで心身の状態を整える





うつになったら

・頑張らない

・無理しない

・環境を変える

・必ず病院に行く



日本の国家予算と医療費

日本の国家予算       101兆円(2019年度)

           税収          62兆円 



日本の社会保障給付費    115兆円(2018年度)

国民医療費           40兆円

介護保険給付費       10兆円  



平均的日本人の収入と税金

年収   420万円

所得税   92千円

住民税   19万2千円

社会保険料 59万7千円

手取り  332万円

2019年12月2日月曜日

 女性労働の問題について 

何が問題なのか
 現在日本の20代男女の賃金格差はほとんどないのだが30代以降、女性が結婚、出産、育児によって職を離れることによって格差が広がり、50代男女の賃金格差は年間360万円ほどである。2017年、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数(男女格差を測る指数)」によると日本は144カ国中114位(2016年は144カ国中111位)と先進国、途上国を合わせた順位でも極めて低い順位にある。
 これは、日本における女性労働についての慣習が、女性を労働の場から切り離してきたことと関係していて、女性は家庭を守り、子育て、育児、介護などを担当する役割と考えられてきたからである。現在でも女性が男性と同じように働こうとすると、乗り越えなければならないいくつもの関門が存在する。
安倍政権は一億総活躍社会を推進しているが、これも少子化による生産労働人口の減少を女性や高齢者の利用で補おうとする意味合いが強く、決して女性の社会的地位を高めようとするものではない。少子化担当大臣を置いてはいるが、保育園をたくさんつくることに主眼が置かれ、男子は育児、教育、介護に参加できない社会制度の中で女性の負担は増すばかりである。
 育児の中で、子供は頻繁に体調を崩し、保育園や幼稚園は体温の高い子供は預かってはくれないし保育中、体調不良の子供は母親に引き取りに来るように電話がある。働く母親は、そのたびに、周囲に気兼ねしながら早退や欠勤を繰り返し、ついには退職せざるを得なくなるのが現状である。本来そのような場合、周囲は協力するべきなのに、あまりにも働く母親に冷淡で、それを当然視するこの社会は異常である。さらに母子家庭になると、周囲はそれ以上に冷淡で、子供の貧困の問題もこのような社会の中で増えているのが現状である。電車や公共の場でも、子連れの母親が周囲に気兼ねしながら小さくなっている状況をよく目撃する。子連れの母親には男性だけではなく、女性もまた味方になってはくれない。

男性による育児や介護
 男性も、決してこの問題に無関心なのではなく、忙しい中できるだけ共にこうした問題を乗り越えようとしているのだが、現実問題としてそれだけの時間が与えられていないし社会の偏見も大きく、この国で主体的に男性が育児を行うことは、ほぼ不可能である。介護も同様で、女性は自分の親だけではなく、夫の親の介護まで負担させられては、結婚生活に希望は見いだせないし結婚しない女性が増えるのは当然で、少子化はその結果でもある。
 本来、職場には医療関係者が常駐する育児施設を設け、育児しながら働けるようにするべきであり、男女同じように育児を行えるようにしなければいけない。先進国を自認するなら、最低その程度のことは準備するべきなのに、そのことに気が付きもしない。

女性労働問題は、男性労働問題でもある
良く知られているように、日本人の労働時間や働き方は過酷である。家庭労働を女性に押しつけることによって、はじめて男性の仕事が成り立つ仕組みは、以前から指摘されてきたことではあるが、その問題が解決されないのは、いくつか理由がある。資本主義初期の頃は、男尊女卑的な思考が社会に残っていたのは事実であるが、現在社会においてなぜそれが正されないかと言えば、出産・育児・教育・介護という問題に企業が関わりたくないからである。社会が負わなければならないこれらの問題を家庭に、それも女性の仕事として押しつけ、男性には社畜のように働いてもらうためである。
 男性は家族を守るため、働けば働くほど家庭の問題から目を背けることになり、本来社会生活の中心が家庭でなければならないのに、次第にその中心軸が会社の中に置かれるようになる。本来、家庭の仕事は皆で分担しながら、助け合うのが当然なのに、男性労働者はそれができないほど会社に酷使されているのである。

女性労働は家計補助的労働
学校を卒業して就職する場合は男女とも大きな差別はなくなったが、結婚・出産を期に職場を離れる女性の数は多く、子育てが終わり再度社会で働こうとしても、今度は容易に再就職できない。多くの場合、パート労働しか出来ないのである。日本では基本的に一度退職したら、二度と戻れないのがこの国の企業のルールである。若い頃、高い能力を認められて働いてきても、パート労働では学生アルバイト以下の賃金しか得ることは出来ない。

税制も女性の社会進出を阻害している

 扶養家族制度は、生活を一にしている配偶者や、子供、両親などを、生活面で金銭的に助ける制度である。専業主婦の場合、当然扶養家族に該当するのであるが、女性が社会復帰して仕事を始めると、扶養家族から外され、夫の収入は減額され、女性は自分の収入の中から所得税、住民税、各種社会保険を支払わなければならない。そのためにはフルタイムで働かなければならず、家庭の仕事は男性同様に不可能になる。そこで、夫の扶養家族として認められる年収130万円未満のパート労働に甘んじなければならず、本格的な社会進出は出来ない。

どのような社会にしたいのか
 こうした問題を社会や国が悪いというのは短絡的である。主体は私たちであり、私たちがどのような社会を構築したいのかという問題である。現在の体制は、高度経済成長期の社会に適合するように創られた制度で、当時としては理想に近かった。時代は変わり、社会や家庭の在り方も変わったのに、制度が変わらないからこのような問題が起こるのである。どのような制度にしたら、より働きやすい社会になるのか、考えて変えなければ何も変わらないのは当然である。理想的な社会を待っているだけではよい社会になるはずがない。声を上げ、理想的な社会に変えるために行動するのは私たちの役割である。

2019年11月26日火曜日

通貨とフィンテック

日本の通貨発行額・・・110兆円 
マネタリーベース  ・・・・517兆円(通貨+日銀預金額)異次元緩和の結果急増した
2013年4月日銀は量的緩和を行った。(400兆円の通貨を増やした)

 世界の通貨流通額   (位:10億USドル)
日本  1,068.20
中国   606.59
ロシア  190.06
イギリス  85.11
アメリカ  982.72
 出所)国際決済銀行(BIS)Statistics on payment,clearing and settlement systems in the CPSS countriesFigures for 2010-preliminary release

紙幣の歴史
紙幣の発行は日本銀行券と書いてあるように日本銀行が発行していて、その製造は国立印刷局である。貨幣の発行は日本国と刻印されているように日本政府で、造幣局で造られる 。
明治以降、発行された紙幣、通貨は基本的に今も使える。関東大震災で発行された紙幣、新円切り替えで発行された紙幣、1円未満の紙幣は使えない。

日本最初の紙幣
現在のように、日本銀行が「日本銀行券」として正式なお札として発行するようになったのは、明治18年)のことで、それ以前は初めて発行されたのは拾円券、商売の神様とされる大黒天の絵が描かれていることから「大黒札」とも呼ばれていた。

江戸時代のお金
金貨・銀貨・銭が流通していた。金貨の1両は4分で1分は4朱であった。銭は4000文で1両である。藩札は、江戸時代に各藩が独自に領内に発行した紙幣で、基本的に兌換紙幣で、貨幣(金貨・銀貨)と交換すると書いてある。

日本最初の銀行は第一国立銀行
明治初期、日本の貨幣制度は混乱していて、銀好きの日本では銀が高く金が安かったので、金が流出し、メキシコ銀などが国内に入ってきた。これらの外国通貨は重さで価格が決められた。このころ、初版が発行した藩札や、政府が発行した太政官札など兌換紙幣や不換紙幣が入り混じっていた。政府はこれを統一するために民間銀行を設立させ、紙幣を発行させることにした。
日本で最初に設立した第一国立銀行の渋沢栄一は、日韓併合直前の大韓帝国に進出し、数年間だけ同行が発行した紙幣の肖像になったことがある。その後、紙幣発行権を持つナンバー銀行の設立が相次ぎ国内の通貨が安定するのは日清戦争後で、賠償金を金で受け取り、それを元に金本位制を確立した。

新しい経済政策
現在の先進国における経済政策は、通貨の供給量を増やし投資を拡大してその利益を手に入れるやり方である。高度に管理された先進国の経済は、通貨の発行量を増やしてもインフレにはならない。そこで通貨供給量を従来の2倍に増やして企業に回るお金を増やした。それは企業が大きな利益を手に入れるのと同時に富裕層を増やした一方、新興国はこの資金を利用して経済成長を実現しようとしているが、先進国の資金に頼ることで不安定な経済になっている。したがって先進国において通貨の管理は今まで以上に重要になった。

キャッシュレス化
現在、キャッシュレス決済の手段としては、以下の三つが存在している。
(1)プリペイド(先払い)
(2)ポストペイ、クレジットカード(後払い)
(3)リアルタイムペイ(リアルタイム決済)・・・現在模索されている支払方法
クレジットカードや電子マネーなど、キャッシュレス決済の比率だけを見ると、'15年のデータでは韓国は89.1%、中国は60%、イギリスは54.9%、アメリカは45%。だが日本は18.4%と、主要国に比べても格段に低く、2025年までに40%に引き上げる予定。今年の10月に行われる消費税の引き上げが、そのきっかけになる。キャッシュレス化を条件に減税を考えている。

中国のアリペイは、店舗側がタブレットや看板でQRコードを提示し、顧客がスマホ決済アプリでそれを読み取ることで支払いを完了させるシステムを開発したが、現在大都市では、顔認証が使われるようになった。中国の顔認証は個人情報など基礎的な問題があるので日本では使われない。日本でも楽天ペイ、PayPay、LINE Pay等がQRコード決済を採用している。スマホにバーコードを表示させ、店舗側が既存のレジのバーコードリーダーからバーコードを読み取ることで決済を完了させることができる。

フィンテック Fin Tech
フィンテックとは「Finance(金融)」と「technology(技術)」を組み合わせた造語で、情報通信技術を活用した革新的なサービスなどの総称をフィンテックと呼んでいる。フィンテックで、代表例としては仮想通貨がある。フィンテックが発展していくことによるメリットは金融機関を介さないことによるスピードと、人の手がかからないことによる手数料などの安さ、手間がかからない便利さといったことがある
フィンテックの技術は、既存の通貨にも応用されはじめ、日本でも三菱UFAはじめ多くの金融機関で研究が始まっている。AIの発展とフィンテック技術の向上は、巨大なデータを利用し新しいビジネスに繋げようと考えている。つまり銀行のライバルは、GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)なのである。
いずれにしても、フィンテックの発達は今まで私たちが行ってきた経済活動を大きく変えてしまう。

仮想通貨
 フィンテックの中でも最も代表的なものと言えるのが、仮想通貨である。銀行などの金融機関を介さない個人間での送金が可能で、送金までのスピードの速さや手数料の低さなどの利便性から注目を集めている。仮想通貨の中で最も有名なのがビットコインである。

ビットコイン
 ビットコインはサトシ・ナカモトと名乗る人物によって投稿された論文に基づき、2009年に運用が開始された。ビットコインシステムは、コンピューターネットワークにより運営され、トランザクション(ビットコインの所有権移転: 取引)は仲介者なしでユーザ間において直接に行われる。このトランザクションはネットワークに参加しているノードによって検証され、ブロックチェーンと呼ばれる公開分散元帳に記録されていく。トランザクションでは通貨単位としてビットコイン が使用される。このシステムは中央格納サーバや単一の管理者を置かずに運営されるので、アメリカ合衆国財務省はビットコインを分散化された仮想通貨というカテゴリーに分類している。ビットコインは最初の暗号通貨とも言われ、その影響力は極めて大きい。
 ビットコインは株式同様に購入することができるが、現在価格は70万円程度で価格の変動が大きく、いまだ不安定な状況である。ビットコインの最小単位は0.00000001satosi(1億分の1)である。

日本の銀行のフィンテックの取り組みは消極的
昨年から日本の大手銀行は一万人規模の人員削減を行っている。キャッシュレス化やフィンテック技術の浸透で銀行の仕事はなくなりつつある。現在銀行はキャッシュレス化やフィンテック技術の導入を抑えようとしている。しかし、将来的に銀行は事業スタイルの見直し(新分野への進出)やフィンテック技術の向上で主導権を取ろうとしている。

2019年11月19日火曜日

企業危機管理の基本


 危機管理とは、普段から起こるかもしれない事態を想定して、事前に準備することである。危機管理には起こる前に(起こらないように)準備しておくこと(リスクマネジメント)と、起こってしまった場合(クライシスマネジメント)にどのように対処して被害を出来るだけ小さく済むようにすることである。かつて危機管理と言うと、クライシスマネジメント(Crisis management)とリスクマネジメント(Risk management)の両者の意味を含む場合が多く、両者が分離したのは最近のことである。

災害の多発と危機管理
 危機管理は、米ソ対立時代、国際的な戦争や紛争といった事態への対応、必要性が認識され、日本においては、1995年の阪神大震災や台風や津波など自然災害への対応、そして企業における事件・自己への対応、学校や病院などにおける安全確保など、様々な分野において適用され、活用されるようになった。

危機管理の重要性
 危機が発生する対象が国際社会であろうと、企業や学校であろうと、そして危機の内容が、人災であろうと、天災であろうと、危機管理の基本は同じで、一つ目は危機を予防し、回避させることである@。天災など予防できない危機に対しては、事態に備えた準備も必要です。二つ目は危機による被害を最小限にとどめることである。日頃から、危機発生時にどのように対応するか、意識することが大切です。そして三つ目は再発防止です。危機発生時の対応に問題があった場合は、新たな対策を練ることが大切である。

危機の種類
内部的要因〉
経営に関する内部告発・・・・(告発者の特定が妨げになっている)
会計不正・・・・・・・・・・(コンプライアンスとディスクロイジャー)
ハラスメント・・・・・・・・(撲滅と啓蒙)
労働時間管理違反・・・・・・(今までの常識は古い)
不良商品・・・・・・・・・・(チェック体制の強化)

外部要因〉
災害・・・・・・・・・・・・(予測 想定 避けられないかも)
火災・・・・・・・・・・・・(予測想定で避けられる)
顧客対応・・・・・・・・・・(クレーム処理)
マスコミ対策・・・・・・・・(マスコミを敵にしたら企業は崩壊する)

経営者危機管理能力が重要
 ステークホルダー(会社の利害関係者)にも危機管理について理解し、共に考えてもらう。特に内部告発者への対応は重要な意味がある。つまり、内部通報者がいないと、会社において行われてきた不正を見逃すことになる。平成16年には内部告発者保護法が成立し、内部告発者を守ることで、企業の不正をただすようにしようと考えているのだが、実際は内部告発者の「その後」は悲惨な状況であることは依然と同じである。
 日産自動車の騒動においては、コーポレートガバナンス(企業統治)の重要性が議論されたが、ここでも利害関係者間の意見の不一致が事態の解決を送らしている。日産事件を防ぐためには企業会計の公明さが必要なのであるが、日本では会計におけるディスクロイジャーやコンプライアンス(順法)意識が低いのではないだろうか。

事例
雪印事件
 雪印集団食中毒事件とは、雪印乳業の食中毒事件と、その後に発生した子会社の雪印食品による牛肉偽装事件のことである。20006月から7月にかけて、近畿地方を中心に発生した、雪印乳業(現:雪印メグミルク)の乳製品(主に低脂肪乳)による集団食中毒事件は、電気系統の故障から、製品が長時間温められて細菌が繁殖し、多くの被害者が出たにも関わらず、これを公表せず嘘の報告で隠蔽し、事態を悪化させたことである。現場の責任者はその後、叱責を恐れていたと供述している。
その間に被害者は、14,780人に及んだ。問題を起こした大阪工場は、期限の操業停止を命じられ、操業再開されることはなく、20013月末に閉鎖された。
事態を悪化させた社長の会見 
 記者会見の延長を求める記者に「そんなこと言ったってねぇ、わたしは寝ていないんだよ!!」と発言。一方の報道陣からは記者の一部が「こっちだって寝てないですよ! そんなこと言ったら! 10ヶ月の子供が病院行ってるんですよ!」と猛反発。この会話がマスメディアで広く配信されたことから、世論の指弾を浴びることとなり、そのまま社長を辞任した。




雪印食品事件
 1996年にイギリスが、クロイツフェルト・ヤコブ病感染者のうち10名の発症原因がBSEに感染した牛肉である可能性が高いという見解を明らかにした。2001年に日本産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)感染が発覚し、農水省は国産牛肉買い取り事業を開始。同事業を悪用し、外国産牛肉を国内産と偽ってパッケージを詰め替え、オーストラリア産牛肉30tを含む、約280tの外国産牛肉を国産牛肉として不正請求したのが雪印食品関西ミートセンターであった。
 事件の背景には外国産牛肉が安価で、日本産は高価であるという価格差問題があった。このため買い取り事業において、日本産牛肉の買い取り価格より、外国産牛肉の購入価格の方が安いという内外価格差が生じた。これに目をつけ外国産牛肉を日本産と偽ることにより、外国産牛肉の購入価格と日本産牛肉の買い取り価格の価格差から来る莫大な利得(税金由来の補助金の騙し取り)を見込んでの犯罪であった。
内部告発
 2002年、雪印食品と取引があった冷蔵会社・西宮冷蔵の経営者による内部告発によって発覚した。これにより、雪印食品の社長が即刻辞任、同時に食肉部門からの撤退を発表、詐欺罪容疑で農林水産省近畿農政局が告発、兵庫県警察本部などの合同捜査本部が雪印食品本社や関西ミートを捜索し、その結果、会社は解散し、多くの従業員も失業した。

雪印の創業者について
黒澤酉蔵
 1885(明治18)年茨城県久慈郡世矢村(現常陸太田市)に生まれる。14歳で東京で働き、16歳で足尾鉱毒事件で闘う田中正造と出会い、共に行動したが逮捕され6か月間留置場で暮らした。その後、 宇都宮牧場の宇都宮仙太郎氏から酪農の手ほどきを受け、20歳で北海道に渡り、北海道に酪農を広めた。北海道畜牛研究会を結成し、生乳が余って酪農家たちが危機に立たされた時には、酪農家自らが製品をつくって売る北海道製酪販売組合(雪印乳業)を立ち上げ、1933(昭和8)年に酪農学園大学の前身である北海道酪農義塾を開校した。
 足尾鉱毒事件で谷中村の農民は、栃木県から那須高原へ強制移住させられた。彼らは米作り以外、経験がなく、当時の那須では米作りが出来なかった。この惨状を救ったのも黒澤酉蔵で、彼らに酪農を指導した。