2009年5月8日金曜日

現代社会の歴史的視点

 現代資本主義社会は、いよいよ成熟期を迎え、私たちの生活する社会もこれからどのような方向に進んでいくのか考えなければならない段階に入った。資本主義社会が絶対的だった時代は終わり、これから、期待される理想的な社会について考えなければならなくなった。資本主義社会はいままでにも何度か危機が訪れ、そのたびにその危機を乗り越えて発展してきた。1929年に世界大恐慌が起こったとき、多くの研究者はこれで資本主義は終わりだと感じ、社会主義社会の到来を予想した。しかし資本主義社会は、社会主義そのものを取り込み、資本主義の体質を自ら変化させることで生き延びてきた。逆に社会主義は全体主義の罠に落ち込み、国民を弾圧し秘密主義が横行することで嫌われ、支持を得られなくなってしまった。
 かつてドイツ歴史学派の研究者たちは資本主義が高度に発展する過程で社会の矛盾が拡大し、そこから混乱を生じることによって資本主義は崩壊すると予言してきた。今から90年前のソビエト革命や、それに続く社会主義諸国の誕生は資本主義が成熟した結果として社会主義へ移行したのではなく、全体主義的な独裁者の都合で社会主義政権を誕生させ、国民を日常的に弾圧するような国家体制を造っていた。これらの社会主義諸国もソビエト崩壊後は、相次いで資本主義社会の側へ復帰し、現在に至っている。ところがその資本主義社会の側にも問題があり、この体制を維持していくことがたいへんな状況なのである。
 今回アメリカ政府が多くの銀行や、自動車産業などに多額の政府資金を投入したことは、自由経済を前提としてきたアメリカ社会が、資本主義的な政策を断念して社会主義的な政策によって経済を復活しようとするものである。いわば、資本主義社会はまた一歩、その終焉に向かって歩みだしたといえる。 この状況から資本主義社会はこの先、まったく姿を変え、結果的に新しい社会が誕生することを予感しているのである。

2009年5月5日火曜日

これからどうなるのか

 この社会はこれからどのように変化していくのだろうか。アメリカによる一極支配が崩壊して、多極化していくのか、それとも本当にアジアの時代が来るのだろうか。先進国は情報化・ハイテク化が進み、途上国は世界の工場として製造業による繁栄を、謳歌するようになるのだろうか。日本では今回の不況で自動車、家電の落ち込みが大きく思ったほど情報化は進んでいなかったことがはっきりした。まだ日本の経済は製造業による輸出産業に頼った産業構造で、これらの企業の業績悪化が日本経済を直撃し大不況が到来してしまった。今後、日本経済はさらに情報化を目指すべきなのか、それともこのまま製造業の主導による経済活動を進めていくべきなのだろうか、それさえもはっきりしない。
 アメリカのバブル経済を良いことに、たくさんの自動車や家電製品を輸出し、日本経済は潤ってきた。これからはアメリカのバブルを当てにした、大量生産・大量販売による経済活動は困難になっていく。これからは企業が儲かるシステムではなく、国民が潤いみんなが豊かになる仕組みを考えなければならない。企業の寿命30年説で考えれば、トヨタやソニー、PANASONICは古い昔の企業である。こうしたグローバル化された企業がいくら儲かっても日本人の生活は豊かにはならなかった。近年、企業だけが潤って日本人の暮らしが豊かになるような仕組みではなくなっていた。
 これから日本で発展する産業はバイオ・情報・IT産業・福祉・看護・農業である。バイオは情報産業と合流するだろうし、高齢化社会を控えて福祉・看護は社会にとって重要な位置づけをされるだろう。農業は今まで生業・家業的に農家によって支えられていたが、後継者の不足や小規模農業の限界が如実になり、このやり方ででは立ち行かなくなる。これからはもっと大きな会社組織によって農業労働者に賃金を払って企業組織として進められ、バイオ産業や情報産業と融合した形の農業が発展してゆく。先進国で食料の輸入国は日本だけである。しかも食料を輸入する理由が、ただ食料不足というのではなく、贅沢な生活を維持し、贅沢な農業を追求した結果の食糧輸入なのである。日本の保守政権が長く続き過保護、補助金漬けですっかり競争も改革も行われなくなった古い体質を温存してしまった。このような農業に将来性もないし、魅力もなく若者が農業に従事するはずがない。今、食品産業は日本の農業が完全に崩壊するのを待っている。後継者もなく、荒れた農地を、これらの産業が入手し、新しい局面で農業活動が行われていくだろう。そして政治家たちは、そこに新しい利権を求めて動き回るのだろう。