2019年7月18日木曜日

高度経済成長の理由



 終戦から10年後の日本、つまり昭和30年代から40年代は日本の高度経済成長の時期であった。ロストウの言う、take off現象が始まった時期である。アメリカが20世紀初頭に高度経済成長を経験したように、少し前の中国、最近のベトナムなど、経済で成功する国では必ず高度経済成長を経験している。高度経済成長できる国とできない国の違いは何か、考えてみよう。

 高度成長の理由

① 国民の復興意識

② 朝鮮特需

③ 1ドル360円の円安

④ 高い貯蓄力

⑤ 豊富な労働

 他にも、たくさんの理由があるが、どれも当たり前な理由で、説得力に欠ける。また、他の国の高度経済成長と日本の高度成長は少し異なるような気がする。なぜならば、日本のこの時の経済成長は、戦争で破壊されたが、かつて豊かだった日本の経済を復興させることを目指していたと思われるからである。現在成功した新興国は、貧しい中から高度経済成長を実現し、豊かさの恩恵を初めて享受したのである。新興国の経済成長は先進国の意識的な投資によって豊かになっている。

2019年7月14日日曜日

コーポレートガバナンス(企業統治)


 

コーポレートガバナンスが必要な理由

コーポレートガバナンスとは企業の経営者が、適切に経営管理を行っているか、不正行為や企業の業績などを監視し、社会に貢献できる存在であるようにするためのシステムである。  企業では組織に対する従来慣行の見直しや、管理における人間関係を再構築する動きがみられる。社会の変化が、企業の組織や人間関係に変化を求める要因であるが、これはまだ、変化の入り口に過ぎず、本格的な変化はこれから起こると考えてよいであろう。具体的には「ハラスメントが告発され、日本社会特有の上司と部下の関係、指揮・命令、あるいは管理しない会社」が話題になるなど、今まで当たり前と思われていた事柄が正しくないといわれ、新たな常識が生み出され、日本企業の管理職は大いに戸惑っている。このような社会変化が、隠されてきた日本企業の闇の部分をあぶりだし、企業のステークホルダーが誇れる企業の変えていこうとしている。

優秀な人材を確保するためには魅力ある職場造りが大切で、会社が常に正しい意思決定を行っていることが、そこで働く社員にとって自慢でありプライドである。正しい意思決定は単純ではなく、株主と顧客などステークホルダー間の利害関係をどのように調整のか、さらにaccountability(説明責任)やSocial responsibility(社会的責任)が求められる。コーポレートガバナンスの基準となるのはコンプライアンス(法令順守)である。

新しい組織とリーダーシップ

多くのビジネスマンが、仕事を進めてゆく上で組織の全体像が見えず、自分の仕事の意味が理解できないという不満があった。大きな組織では、企業の経営理念や目標が多くの社員に理解されておらず、経営管理上の情報も一部の管理者しか把握されていないということから起こっていた。そこで経営目標や情報をどのように全社的に共有するのか、そのためにはどのような組織を構築するのか、情報端末の利用の仕方なども考えなければならなかった。 押しつけがましかったQCサークルも、多くの場合不評である。強制的なグループ活動は現代社会の常識からみて時代遅れの観をぬぐえない。仕事のやり方がプロジェクト型になり、チームを構築して仕事を行う方がより現代的といえる。問題はプロジェクト・マネジャー育成の遅れである。今までのように命令と服従といった仕事のやり方ではリーダーシップは育たない。入社後すぐにリーダーの育成をめざすためには、トップマネジメントと同じ情報を共有し、意思決定の過程を検証できるようにすることが望ましい。

変化する企業経営

 優秀な人材を確保するためには魅力ある職場造りが大切で、会社が常に正しい意思決定を行っていることが、そこで働く社員にとって自慢でありプライドである。正しい意思決定は単純ではなく、株主と顧客などステークホルダー間の利害関係をどのように調整のか、さらにaccountability(説明責任)やSocial responsibility(社会的責任)が求められる。コーポレートガバナンスの基準となるのはコンプライアンス(法令順守)である。
企業の不祥事

① 日産自動車の事例(曖昧なガバナンス)   
 日産自動車は経営者であるカルロス・ゴーン氏が自身の報酬を少なく申告し、金融商品取引法違反で逮捕され、の報酬の多さに日本の社会が驚愕した。会社の資産を、勝手に着服したとみなされ、会社から解雇された。
 ・日本の企業はだれのものか、未だに結論が出ないまま曖昧にしてきた。

② スルガ銀行の不正融資
 スルガ銀行は創業家である岡野一族による経営が100年以上続いていた。そのため、創業家の権力が大きく、アパート融資で多数の不正が行われ2017年に投資家から告訴されて問題が知られるようになった。多くの従業員も不正を知りながら、上司に逆らうことができずに関与してきた実態が明らかになった。
 ・社内で起こるハラスメントへの対応
 ・企業の不正を見つけるシステム

 ③ 東芝の粉飾決算
  2015年、東芝は、長年にわたる不正会計が明らかになり、会計報告ができなくなってしまった。このた め、経営陣は総退陣となって2300億円もの不正会計がおこなわれたことが明らかになった。家電メーカーは新興国に追い上げでテレビやパソコン事業から相次いで撤退してきた。ところが東芝は管理者能力の欠如によって、撤退することを躊躇し、赤字を積み上げてしまった。この赤字を隠すために台湾メーカーを利用して不正会計が行われた。

 ・経営者の能力欠如・・・大企業は業種転換など、強いリーダーシップが求められた。

  安定した経営を続けてきた日本の大企業は、時代の転換期にこのような能力欠如が明らかになる。東芝以外にも自動車会社のデータ改ざん、セブンイレブンの加盟店トラブル、「7Pay」不正アクセスなどでも経営者の当事者能力が不足していることが読み取れる。

 コーポレートガバナンスの原則 
  ガバナンスは企業のステークホルダーが主体的に決めるもの
  正しい判断を行うための材料を慎重に集める(情報収集に時間をかける)
  何が正しいのか、その判断を行うため必要な情報収集・・・・誰が正しい判断を下すのか
 

日本的経営の崩壊(グローバル化の影響)
終身雇用・年功制など日本的経営の崩壊       働き方改革
組織内の混乱を避けようとする意識が高い         短期雇用で共同体意識の欠如 
不安定な雇用で会社は従業員を守れない   ⇒     新たな雇用保障システムが必要
命令をハラスメントと感じる                 職場民主主義とリーダーの自信喪失
時代の変遷による世代間意識の乖離          経営理念の形骸化
SNSによる炎上と内部告発              マネジメントの見直し(正しいことをしているのか)

 急激に変化する職場の人間関係 
雇用制度の不満 (会社は自分を必要としていないと感じる・低賃金)
組織の中での立ち位置が見えない

組織内の人間と親しくする必要性を感じない

 

2019年7月9日火曜日

情報化と民主主義


 
    最初に情報化という言葉が使われたのは、今から40数年前のオイルショック後、産業構造審議会あたりではなかったかと記憶している。当初、情報という言葉の中にコンピュータに関わる意味などあろうはずがなかった。オイルショック後、ダニエル・ベルの「脱工業化』が「高付加価値」な社会を意味していることだと理解した。そして情報化とは、工業化社会の次に来る、高付加価値なコンピュータ産業に与えられた言葉になった

 右肩上がりに発展する経済が当たり前だと思われていた時代だったから、情報化でさらに発展し豊かな時代が来ると信じていた。しかし、現実は違っていた。民主主義を前提としない新興国の経済が発展し、一国の大統領が民主主義を過去のものと述べるなど民主主義の退潮が露わになり、経済さえ発展すれば良いと考える愚かな考え方がまかり通っている。

中国とアメリカでは信用スコアの利用が始められている。ネットでの取引が増える中で、取引相手の信用度が重用になっている。信用スコアは当初、企業向けの組織の信用度に関するものであったが、現在中国ではテンセント、アリババなど個人向けの取引で重要な役割を果たしている。従来個人の信用調査は個別の企業が独自に集めた情報に基づく極秘のデータであったが、この信用スコアがオープンになり、だれでも自分のスコアを確認することが可能になっている。中国においては政府が、不正取引防止のため、すべての国民に自分の信用を意識させることを目的として行っている。アメリカも同様なシステムを構築していて、AIによる情報の処理で、簡単に信用スコアを使用することができるようになっている。スコアは高学歴、高収入者が高くカウントされ、そうでない者は低くカウントされ逆転は難しい。

日本では、国民のプライバシー意識が高く、組織が勝手に個人情報を収集することに対して不快感があり、簡単に信用スコアを容認するとは思えないと考えていたが、日本においても、すでにこうした信用スコアの利用は始まっている。すでに私たちの個人情報は数多く組織の手に渡っていて、組織やAIがスコアの点数によって強制的に格差を生み出し、それを自己責任として押しつけ、個人を支配する時代がそこまで来ている。AIの利用はビッグデータの集積を前提としていて成りたっている。だからこそ民主主義や人間に対する尊厳を理解せず、経済発展という目的を最優先することがいかに愚かであるか理解できるであろう。そして自由や民主主義を理解できない者が、AI社会を創ろうとしている現状に、危機感を持つのは私だけではないはずだ。民主主義や自由を失ったら、それを取り戻すことは容易ではない。

2019年7月1日月曜日

ドラッカーのリーダーシップ論


1 .リーダーたることの要件は、リーダーシップを責任と見ること。

リーダーシップとは、命令することでも、強要するものでも、権限でもない。リーダーはチームの全ての責任を持つこと。それをリーダーシップと見ることが大切。        『プロフェッショナルの条件』P.F.ドラッカー

2.  変化はコントロールできない。できることは、先頭に立つことだけだ。

何が起こるかわからないなかで変化に対峙するときリーダーは先頭に立って状況を読み判断を下すことが求められる。

変化は予測不可能でコントロールできない。リーダーができることは甲板に立ち、望遠鏡から垣間見える変化に、誰よりも先んじて号令をあげることである。           『チェンジ・リーダーの条件』P.F.ドラッカー

3.  人材は、企業規模とは無関係である

優秀な業績を上げている企業は、それほどではない企業に比べて、優秀な人材に恵まれていると思われているが、そうではない。すべてはリーダーに依存することをよく承知し、人材不足を憂うのではなく、リーダーシップに焦点を当てて、強みを伸ばすべきだ。つまり、人材は、企業規模とは無関係である。    『マネジメント』P.F.ドラッカー

4. 優れたリーダーは、とは言わない。意識して言わないのではない。を考えないのである。いつも、われわれを考える。チームを考える。彼らは、自分の仕事がチームを機能させることだということを知っている。責任を引き受け、逃げることをしない。成果はわれわれのものとする。考えることは、なされるべきことと、チームのことだけである。そこから信頼が生まれ、なされるべきことがなされる。     (ドラッカー名著集(4)『非営利組織の経営』)

5. ドラッカーは、リーダー用の資質などというものはないと言う。リーダーにはいろいろなタイプがある。しかし、リーダーたるために必要とされる姿勢は、いくつかある。
 第1が、人に聞くことである。聞くことは、スキルではなく姿勢である。
 第2が、自らの考えを理解してもらう意欲である。そのためには何度も言い、身をもって示すことである。
 第3が、言い訳やごまかしをしないことである。何事にも本気であることである。
 第4が、仕事の重要性に比べれば、自分など取るに足りない存在であるとの認識である。仕事と自らを一体化しないことである。仕事とは、リーダーよりも重要であって、リーダーとは別個の存在である。

6. 私の知っているほとんどのリーダーが、生まれつきのリーダーでも、育てられたリーダーでもなかった。自らをリーダーとして作り上げた人たちだった。トルーマン大統領は、ルーズベルト大統領の突然の死によって大統領になったとき、今米国のリーダーとしてなすべき最も重要な仕事は何かを考え、急きょ、不得意だった国際問題に取り組み、旧ソ連の封じ込めに成功した。マッカーサー元帥は、自分よりも頭のよい者はいないはずと自負しながらも、部下の言に耳を傾けて最強のチームをつくり上げた。気性には合わなかったが、それがリーダーの役割だということを知っていた。リーダーたるものは、献身しつつも個たりえなければならない。そのとき仕事もうまくいく。自らを仕事の外に置かなければならない。                                  『非営利組織の経営』      

7.リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない」    『現代の経営』

8.リーダーシップとは仕事である。リーダーシップの素地として、責任の原則、成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはない。リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもない。意味あるリーダーシップと組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することである。リーダーとは目標を定め、優先順位を決め基準を定めそれを維持する者である。リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだ。リーダーと似非リーダーとの違いは目標にある。

9.リーダーといえども、妥協が必要になることがある。しかし政治、経済、財政、人事など現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる。ドラッカーは多くの一流のリーダーたちを目にしてきた。外交的な人も内省的な人も多弁な人も寡黙な人もいた。

 「リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである」   『プロフェッショナルの条件』

10.リーダーは尊敬されるが、必ずしも好かれるとは限らない。リーダーに人気投票は必要ない。有能なリーダーは、「自分は何をしたい」との問いから物事を始めてはならない。そうではなく、「この場でいかなるニ-ズを満たすべきか」「何に対して貢献することが要求されているのか」「どこへ、どういう形で寄与したらよいのか」という問いからスタートせよ。