2019年9月30日月曜日

資本主義システムの本質と株式会社


これはもう資本主義ではない
最近の新しい経営手法が次々と発表され、株式会社制度も大きく変わるという、意見に異論はあるまい。実際に起こっている変化は、ハラスメントなど組織内の人間関係の崩壊、ホラクラシーなど管理をしない組織、さらにベーシックインカムは国が国民にお金を分配し働く必要が無い社会の誕生など、これはもう資本主義社会ではない。
株式会社制度は広く人々から少しずつ資金を投資してもらい、その資金を元に大きな株式会社を設立し、賃金を支払って労働者を雇い、専門経営者が会社を効率的に経営し、利益を出して社会に貢献し出資してくれた株主には配当金を出すシステムである。こうした株式会社システムに変化が起こり、だれもが納得できるようなシステムではなくなった。
日本を始め、先進国はどこもここ数年にわたり、低成長が続いている。日本の場合は深刻で、この低成長が30年近く続き、どのような政策を実行しても、かつてのような勢いがみられなくなった。このため先進諸国が行っている政策は、成長可能な途上国への積極的な投資である。これにより途上国は近年急激に経済発展をしているが、先進国経済を支えるほどの力はない。エネルギー、資源、経営資源の限界と労働者の不満が、今までのような発展を阻害している。株式会社制度を前提とする資本主義経済を根本的に変えていかなければ、自国さえよければというエゴとナショナリズムが台頭し、危険に満ちた世界が生まれることになる。

法政大学教授、渡部亮氏は2016/10/5付日本経済新聞の夕刊に「ポスト資本主義の時代」という、意見を述べているので提示しておく。
1990年代初頭のソ連崩壊をみて、欧米諸国は自由民主主義や資本主義の勝利を宣言したが、それは勝利ではなく共産主義の自滅にすぎなかった。なぜなら欧米自身がリーマン・ショックやユーロ圏債務危機によって自己崩壊に直面したからである。同様に、欧米の金融危機とその後の低迷も中国など新興国の勝利を意味しなかった。市場経済への移行に伴う混乱によって新興国経済も自己崩壊の危機に直面したからである。
 資本主義は多数の人々の生活水準を高める半面、行き過ぎた利益追求が資産バブルや格差問題を引き起こすといった二面性を持っている。グローバル化や規制緩和も限界に達した感がある。英国の欧州連合(EU)離脱がその象徴である。
 金融危機や格差問題に加えて地球環境劣化、少子高齢化、情報通信技術の進歩といった激変も起きている。このうち情報通信技術に関していえば、インターネットやスマホの利用で生活の利便性は向上したが、家計消費の増加には直結しない。情報財の限界生産費は低く、多数の人が繰り返し利用しても、市場価格表示の付加価値はあまり増加しない。
 資本主義は長期波動を繰り返しながら発展を続けてきたが、現状では躍動感が消滅したようにみえる。今や市場経済だけでは対応できない問題が多発している。財政金融政策で解決できる問題でもないし、強権的な国家統制でも突破できない。
 これはデフレとか景気後退とは異次元の体制転換問題といえる。私的財産権と市場取引を両輪とする資本主義が、共同利用権や貸借権の市場外取引に代替され、ポスト資本主義に移行するといった論調も出始めた。現在話題の人工知能やフィンテック、ヘリコプターマネーも、単なる技術論ではなく、ポスト資本主義との整合性を考慮に入れて議論すべきであろう。」

以上が渡部氏の意見であるが、さらに考察すれば、新興国や世界中の人々が豊かになることは、不可能である。資本主義システムはピラミッドの上位に存在する国家には大きな利益をもたらしたが、上位国はエネルギー、資源、技術を独占支配しているため、途上国の発展は限定的である。その結果、途上国の不満も次第に大きくなって対立も激しくなってくる。資本主義システムは限界に近づいてきているのである。

2019年9月24日火曜日

二つのグローバル化

 グローバル化の定義については議論のあるところであるが、グローバル化には大きく分けて、二つの考え方がある。一つはアメリカが主導したグローバル化で、アメリカ化とも揶揄されるように、アメリカが世界一の経済大国としての地位を維持し、世界のリーダーであり続けるための政策としてのグローバル化である。これは規制緩和と、企業が何をしても許される全く自由な経済システムを構築し、だれも追いつくことができない巨大企業を創り上げ、アメリカ社会に富裕層を激増させた。強者・巨大企業と、弱者・中小企業が同じ条件でスタートラインからスタートすれば、弱者が負け、巨大企業が勝つのは当たり前である。それなのに敗者には自己責任として切り捨てられ、勝者にすべてを奪われてしまうグローバル化である。このグローバル化によって格差が広がり、日本においは、日本的経営が破壊され、グローバル言語、グローバル規則、そしてアメリカに世界中の余剰資金を集め、ドルに交換して世界中に投資を行い巨大資本のために利益を得るようなグローバル化である。

 一方、地球規模で情報を共有し、共存して相互に幸福度を高めるグローバル化も存在する。地球のエネルギー資源や環境を考慮し、国家間の取引においても共存共栄を前提に働く人々や、対象国の人々が真の幸福や豊かさを共有できるシステム作り、企業の利益追求ではなく、社会貢献を目的とし、株主のためではなく、すべての人類のために貢献しようと考える企業によってなされるグローバル化である。日本が目指すべきグローバル化の方向はこちらである。