2020年1月20日月曜日

カルロス・ゴーンの経営

なぜカルロス・ゴーンが日産自動車のトップになったのか。

2000年日産自動車は6000億円以上の負債を抱え、経営破綻寸前だった。トヨタに対する対抗意識が高く、儲からなくてもとよたと同じような経営を行ってきた。しかし、無借金会社のトヨタは日産のライバルではなく、トヨタ独自のトヨタローンを組んで顧客に車を売れば、利子だけでもトヨタは利益を出すことができるので、場合によっては原価で売っても利益は出る会社である。日産は儲からなくても車を売り続けた、いわば経営者の責任は重い。

 結局、日産自動車はフランスのルノー社から資金の援助を受けて再建することになった。ルノー社はミシュラン(タイヤ会社)の再建を成功させたゴーン氏を受け入れ、わずか1か年で経営を再建した。しかしそのやり方は、工場ごと廃止し、そこで働いていた労働者14万人のうち21千人を一度に解雇してしまった。強引で、超法規的なやり方は批判されたが、日産の再建を成功されたことでゴーン氏の名声は高まり、カリスマ経営者の名声を手に入れた。通常、社員を解雇するためには、出来るだけ解雇せずに済む方法やいくつかの問題をクリアしなければならない。だからそれまでの日本人経営者は大量解雇できずにいた。ゴーン氏は法的手続きを飛ばしてしまい、だれもそれを非難しなかった。つまりゴーン氏の経営は最初から法を無視した超法規的経営だった。彼にコンプライアンス(法を順守する)を求めるのは無理だったということである。それなのに日本人は、彼を褒めたたえカリスマ経営者と祭り上げてしまった。今更彼に法を守るように説得しても意味がないし、彼は、法を無視した、やりたい放題の経営を行ってきた。伝えられるように、彼は年間10億円の給与を得てきただけではなく、その数倍の資金を日産から得てきたことのようである。10億でも日本の経営者の中では最高金額である。彼は、アメリカのグローバル企業は、日産より小さな会社でも、もっとたくさんの給与を得ていることを知っていた。

 グローバル企業の経営は、あまりにも多くの問題があり、そのやり方は明らかに誤っている。ドラッカーは経営者の給与は一般的な社員の7~8倍程度が望ましいと語ってきた。その後も、グローバル経営者があまりにも多くの給与を得るようになってからも、20倍以内にしろと述べている。ゴーン氏の給与は200倍どころではなく1000倍近い給与を得てきたことになる。明らかに間違えているが、これがグローバル経営の実態である。

 

コーポレートガバナンス

 コーポレートガバナンス(企業統治)とは経営者が、どのように組織を管理するのかという問題である。当然、コンプライアンスは当然のことであるが、それより重要なのはゴーン氏の経営によって、日本のグローバル企業の多くが、ゴーン流経営を肯定してしまった結果、誤った方向に向かってしまったということである。経団連の経営者たちは、口をそろえて、いつでも労働者を解雇できるシステムを造れと言って、政府はそのような法改正を行ってきた。経営者の給料は上がる一方なのに、そこで働く労働者の給料は低いままである。小泉内閣以降、現在に至るまでグローバル化を過信して労働者を無視し、それまでの終身雇用制度を廃止し、再雇用制度も整備もせずに、労働者を不安定な地位に貶めてしまった。

 この授業でしばしば、話してきたことだが、「企業経営の目的は社会貢献である」利益は社会貢献するために必要な条件であり、それが目的ではない。ゴーン流の経営は、この面でも誤っているが、私たちも働くことが人生の目的ではないことを再認識するべきである。働くために生まれてきたのではない。社会生活を送るためにお金が必要なので、そのためのお金を得るために働くのである。家庭や家族を守ること、地域社会で楽しく暮らすこと、友人や仲間と楽しい時間を持つこと、そして何より自分がやりたいことを実現するために働いていることを忘れてはならない。

 日本社会は、海外の誤った潮流に乗せられ、自分たちの進むべき方向を見失ってきた。従業員を大切にしてきた日本の経営管理は間違えていなかったことを誇るべきで、本当に正しい方向へ自信を持って舵を切り直し、世界にそれを示すべきである。

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