2019年5月16日木曜日

トヨタ・システム 


 トヨタ・システム     
 かつてフォード自動車の工場には製鉄所,ガラス工場,ゴム工場まであった。そしてその原料を調達するために鉱山やゴム園まで経営していた。GMは現在世界一の自動車会社である同時に,世界一の自動車部品会社でもある。あたりまえのようだが,アメリカでは自動車は自動車会社で造られている。
 トヨタ自動車は日本最大の自動車会社である。そこでの車づくりはトヨタ独自の斬新(ざんしん)なやり方で各所に工夫が見られる。最大の特長は下請けの利用であり,安くて故障の少ないと言われる車の大部分は,実は下請け工場が製造している。下請け工場がなければあの優秀な日本車を製造することはできない。トヨタは下請け企業が造ってきた部品を集めて,車の組立てを行っている工場なのである。
下請けシステム 
自動車の強さの秘密はたくさんあるが,その中でも特筆されるのは,トヨタに一生懸命協力してきた多くの下請け企業の存在は重要であろう。一次下請け205社,二次・三次下請け約8000社,更に小さな町工場まで加えると50000社の企業が,トヨタ自動車一社に寄り添って生きているのである。トヨタは主に愛知県内に工場を集中させて立地しているために下請け企業もこの地域に密集している,まさに企業城下町となっている。日本の自動車産業は自分の工場で部品を造るうち製化率は30%前後で,アメリカの自動車会社が70%という数字と比べると,その違いが著しいことがわかるであろう。その中でもトヨタは多くの下請けを利用した車づくりを行っているので,これらの下請けを巧みに利用するシステムが必要になったのである。ちなみに,下請けを利用する産業は日本の場合,自動車産業だけではなく,多くの製造業で見られるが,トヨタのように,地域的に限定して多くの中小企業が,集中しているのは数少ない。トヨタが他県や,外国への工場進出が遅れた理由はここにあって,これらの中小企業がいなければ車は造れないし,これだけ多くの中小企業が一緒に進出することは不可能である。
かんばん方式 下請け企業を利用して,モノづくりを行うことはどの産業でも
        やっていることではあるが,トヨタでも下請けに対して,より安く・より精密で故障のない製品を要求するのは。酷であろうか。トヨタは,工場敷地内に倉庫を持たない無在庫経営を推し進め,そのために,下請け企業の製造した部品の工場内搬送は最新注意と計画で行われている。在庫がないということは,財務上大変有利である反面,下請け企業の部品搬入が遅れた場合,工場の生産そのものがストップしてしまう危険性をはらんでいる。そこで採用された下請け部品企業の工場内搬入システムが,JIT(just in time)である。


JIT
 JITは必要なとき,必要なものを,必要なだけ,必要としている場所へ部品を搬送するシステムで,特に搬送する時間の遅れは絶対に許されないので,事故や渋滞などを見越して,しばしば部品を満載したトラックが,トヨタの工場の周辺で,時間待ちをしている光景に出会うことがある。下請け企業は親会社から,注文を受けると慎重に製造しロット番号を確認し注文どおりの製品を確実に納入しなければならない。この部品の入っている箱に添付されているコンピュータで作成された注文書を「かんばん」と呼び「看板」と区別している。部品の欠陥品比率は大変に低く,数十万分の一といわれ,欠陥品があった場合,その原因を徹底 このようなトヨタ自動車が考え出した故障の起こらないような,モノづくりのシステムをトヨタ・システムと呼び他の製造業に波及してきた。現在では世界中の製造業からも注目され,トヨタ・システムを学ぶ企業も多いが,一方で厳しすぎる管理に対する批判も多い。
ムダの排除
 トヨタ・システムはQC活動を通じて徹底的にムダをなくしていこうという考え方で、下請けを含めた生産現場のあらゆる段階でムダ探しを行い、ムダ排除のための新しいアイディアを提唱した者には表彰が行われる経営スタイルである。
 トヨタが特にこだわるムダは以下の7つのムダといわれるものである。①加工のムダ、②在庫のムダ、③作りすぎのムダ、④手待ちのムダ、⑤動作のムダ、⑥運搬のムダ、⑦不良品のムダである。
トヨタシステムは万全なのか
 1984年にトヨタとGMは共同でNUMMIというカリフォルニア州に自動車会社を設立し、トヨタのかんばん方式など日本独特の製造工程をGMに伝授したことがある。20年近く経営されてきたが、その役割も終えて、解散してしまった。その間にGMはトヨタの車づくりについて十分に理解し、そのうえでトヨタシステムは細かいムダを排除するには最良のシステムだが、自動車会社全体に関わる大きなムダについては、見逃してしまうのではないかと考えていた。そしてGMはトヨタシステムを改善した、リーン生産方式を立ち上げることになった。ちなみに、NUMMIの工場は、その後テスラ・モーターが引き継いだ。

0 件のコメント: