2009年4月18日土曜日

何が起こったのか

アメリカ経済発展のカラクリ

2008年夏にアメリカで起こったサブプライムローンの破綻は瞬く間に世界中に大きな波紋を投げかけ半年後の現在でも企業の経営に大きな負担を与え、収束する気配は見えない。サブプライムローンはアメリカにおける中下層の人たちに住宅を提供しようとするもので、アメリカにおける社会政策の一環である。アメリカにおいて彼らが住宅を取得することは並大抵なことではない。いったん景気が低迷して失業したらローンの返済は滞り、せっかく手に入れた住宅は手放さなければならなくなる。日本と違って、品物の購入について、お金を貯めてから買うという習慣はなく、欲しいものはローンで購入し、後で支払えばよいと考えている。

貯蓄を持たないアメリカ人にとって物品をローンで購入することはごく自然なことで、サブプライムローンの破綻は日本人が考える以上に企業に対する影響は大きい。アメリカの金融機関は不良債権も多く、その対策として優良債権の中に不良債権を潜り込ませ一緒にしたものを金融商品として分割して売却している。アメリカの通貨はアメリカの通貨であると同時に世界通貨でもあり、世界中からの需要も多くアメリカに投資する国は多い。アメリカ政府はドルをいくらでも印刷することが出来るし、それによってインフレを心配することなくドルを発行しながら、海外からの資金を集めることが出来る。



  双子の赤字と呼ばれる財政赤字・貿易赤字でもアメリカは20年以上経済発展を続けられることが可能だったのはアメリカ以外でドルの需要があるからで、アメリカ国内で使われる以外、海外何処でもアメリカのドルは必要だからである。近年のアメリカ経済の繁栄は、海外から集められた投資資金を使って、この金をローンという形でアメリカ国民に使わせている。日本や中国のように輸出によって経済発展に成功した国では、大量にドル資金が流入する。ところがこのドルの投資先はそれほどたくさんあるわけでなく結局、金利の高いアメリカに向けて資金を投資することになる。こうしてアメリカ政府はアメリカ国債を日本、中国、中東諸国に売りつけてきた。つまり海外の資金をアメリカに集め、その金をアメリカ国民に使わせ、消費を煽る。購買意欲旺盛なアメリカの消費者は、ローンを使って商品を購入し大量に消費する。そこでアメリカは日本、中国などから消費財を購入し貿易収支は赤字となるが資金と商品が日本、中国アメリカの間をぐるぐる回転するようになっている。

  ところがこのサブプライムローンの破綻は、日本、中国、アメリカの経済循環の回転を分断することになってしまった。株価は暴落し、資金不足に陥ったアメリカ金融機関は、その存続さえも危ぶまれ、多額の政府資金の投入を必要とした。企業も資金不足になり経営の縮小と従業員の解雇を行わざるを得ない状況になった。消費者は購買意欲を失い、日本中国からの購入を減らした。そのため日本、中国は商品の売却先を失い経済縮小を余儀なくされ世界同時不況の波に飲み込まれてしまった。

  さらに世界経済の状況はさらに深刻である。多くの国では、アメリカを胴元としてマネーゲームが行われていた。少しでも金利が高く条件の良いところに多額の資金が投入され利ざやを稼いでいた。当然、より多くの投資資金があれば儲けも大きくなるので多くの資金が導入されることになる。そこで自分たちの持っている資金を担保にさらに多くの資金を借りて投資を行うようになった。これらの国では株価の下落や借入金の返済で大損をしてしまった。



  これが現在までに起こった世界経済の状況であり、不況は長引き簡単に回復できないのではないかと思われる。今、必要なことは経済を元も状態に戻すことではなく、行き過ぎたマネーゲームをやめ、過剰消費を抑えながらも新しいシステムで発展していくシステムを構築することである。経済を元に戻したら、またあのマネーゲームが始まるだけで状況はより深刻になってしまう。だから時間がかかり政府の役割も重要である。政府は国民に短期的ビジョンと長期的ビジョンを示す必要があり、政治がしっかりしなければ困るのは国民である。

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