2019年7月9日火曜日

情報化と民主主義


 
    最初に情報化という言葉が使われたのは、今から40数年前のオイルショック後、産業構造審議会あたりではなかったかと記憶している。当初、情報という言葉の中にコンピュータに関わる意味などあろうはずがなかった。オイルショック後、ダニエル・ベルの「脱工業化』が「高付加価値」な社会を意味していることだと理解した。そして情報化とは、工業化社会の次に来る、高付加価値なコンピュータ産業に与えられた言葉になった

 右肩上がりに発展する経済が当たり前だと思われていた時代だったから、情報化でさらに発展し豊かな時代が来ると信じていた。しかし、現実は違っていた。民主主義を前提としない新興国の経済が発展し、一国の大統領が民主主義を過去のものと述べるなど民主主義の退潮が露わになり、経済さえ発展すれば良いと考える愚かな考え方がまかり通っている。

中国とアメリカでは信用スコアの利用が始められている。ネットでの取引が増える中で、取引相手の信用度が重用になっている。信用スコアは当初、企業向けの組織の信用度に関するものであったが、現在中国ではテンセント、アリババなど個人向けの取引で重要な役割を果たしている。従来個人の信用調査は個別の企業が独自に集めた情報に基づく極秘のデータであったが、この信用スコアがオープンになり、だれでも自分のスコアを確認することが可能になっている。中国においては政府が、不正取引防止のため、すべての国民に自分の信用を意識させることを目的として行っている。アメリカも同様なシステムを構築していて、AIによる情報の処理で、簡単に信用スコアを使用することができるようになっている。スコアは高学歴、高収入者が高くカウントされ、そうでない者は低くカウントされ逆転は難しい。

日本では、国民のプライバシー意識が高く、組織が勝手に個人情報を収集することに対して不快感があり、簡単に信用スコアを容認するとは思えないと考えていたが、日本においても、すでにこうした信用スコアの利用は始まっている。すでに私たちの個人情報は数多く組織の手に渡っていて、組織やAIがスコアの点数によって強制的に格差を生み出し、それを自己責任として押しつけ、個人を支配する時代がそこまで来ている。AIの利用はビッグデータの集積を前提としていて成りたっている。だからこそ民主主義や人間に対する尊厳を理解せず、経済発展という目的を最優先することがいかに愚かであるか理解できるであろう。そして自由や民主主義を理解できない者が、AI社会を創ろうとしている現状に、危機感を持つのは私だけではないはずだ。民主主義や自由を失ったら、それを取り戻すことは容易ではない。

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