2019年6月11日火曜日

科学的管理法と生産性の向上


科学的管理法

科学的管理法(scientific management)とは、アメリカ人機械技師のテイラー(Taylor, Frederic W.)が1911年に出版した著書の題名であり、工場管理のシステムおよびその思想について研究が行われたので、テイラー・システムともよばれる。

 テイラーは、それまで成り行き任せ(drifting)であった管理を、科学的アプローチに基づくシステム(制度)に置きかえて、合理的で能率的な生産を可能にしようとした。科学的管理法は、作業の時間研究と動作研究を通じた課業の設定とその実施のシステムであり、計画に基づく近代的管理システムである。しかしながら、計画職能と作業職能の分離、すなわち計画職能の担い手は管理者であるというその根本原理が、科学的管理法は労働強化システムであるとの厳しい批判を生み出してきた。

テイラー・システムとは、一日の作業量や作業手順をマニュアル化することでどのような人材でも一定の作業ができるようにするシステムである。このテイラー・システムを取り入れて成功した自動車メーカーのフォードでは、製品を単純化して、部品を規格化するとともに、コンベアシステムを導入することでより合理的な生産が可能になった。このことでアメリカの自動車生産台数は飛躍的に増大、1914年にはアメリカで生産する自動車の約半分をフォードがまかなっていたといわれ、作業員の労働時間も、10時間程度だったものが8時間労働制に改められた。

 以後、製造業における生産性を上げるために、様々な試みがなされ行動科学など経営学における新しい潮流がみられるようになった。

 

ホーソン実験

ホーソン実験(Hawthorne experiments)はアメリカのシカゴ、ウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実施されました。行われたのは1927年から1932年で、ウェスタン・エレクトリック社で調査が実施され、途中からハーバード大学のエルトン・メイヨー、フリッツ・レスリスバーガー参加した。

照明実験

そのひとつが照明実験で100ワットの照明から25ワットにまで照明量を下げ、照明と生産性の変化を観察しました。多くの研究者は明るい照明にすることで生産性がアップするだろうと予測を立てていた。しかし実験の結果、照明と生産性は相関しないという結果が出た。

リレー組み立て実験(継電器組立作業実験)

次に行われたリレー組み立て実験(継電器組立作業実験)では、組み立て作業員と部品をそろえる世話役とでグループを作る、監督を配置して労働条件を変えるといったことから生産性を観察した。労働条件が改善されると作業能率は上がり、元の条件に戻しても上がった作業効率が下がりませんでした。予想に反して労働条件と作業効率の関係性は見つからなかった。この実験を通じて仲間意識が強いグループや選ばれたことへの誇りが仕事のモチベーションに影響したという仮説が立てられた。続いて実施された面接実験においても、労働意欲が職場の人間関係に影響されることは確認されている。

 

バンク実験

最後に行われたバンク実験では社会統制機能を果たす小さなグループがあるという仮説のもと、利害関係にない傍観者が生産性に与える影響を観察した。バンク実験では、対内的・対外的機能を有したインフォーマル・グループの存在が明らかになった。また監督者に対しては防衛と共存の関係にあって、個人的な関係性が品質に反映するという結果が出ている。

 

ホーソン実験からの教訓

はっきり申し上げて、ホーソン実験をあんなに大掛かりにやる必要などあったのだろうかと疑問に思う。我々が生活する中で、また仕事の経験から作業条件でそれほど作業能率が異なるとは思えないからである。もし、恵まれた条件の中で行う作業が効率的だとしたならば、明治維新期の松下村塾からあれほど多くの優秀な人材を輩出したわけが説明できない。少なくとも現在の学校は松下村塾の設備よりもずっと恵まれているのではないのか。
それより面白いのは、あの本の中で触れられていた著者が女性従業員から「うちの食堂は美味しくないので、経営者に改善するように話してください。」と依頼された件である。著者は話を聞き流し、経営者にそのような話はしなかった。ところが次にその女性と会ったとき、「おかげで食事がおいしくなった。」と御礼を言われたのである。このことから解るように、もし管理者が今よりもっと効率を上げたいと望むならば、部下や従業員から出来るだけたくさん相談をうけ、話を聞けば良い。多くの場合、話を聞くだけで相手は満足し、問題は解決するからである。 

0 件のコメント: